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Nobody Knows
夫がDVDを買ってきた。主演の柳楽優弥くんがカンヌ主演男優賞を受賞したので、日本でも話題になった作品「誰も知らない Nobody Knows」。私は去年のバンクーバー映画祭で観たのでこれで2度目。

息子たちも一緒に家族で観る。日本の事情に疎い彼らのためにところどころ解説していたから、今回はちょっと傍観者のような気分だった。もしこれが初めてだったら、こんなに冷静ではいられなかった。実際、映画祭では涙が抑えられなくて、胸が痛くて、無力感に襲われた。観たあとの数日間はいろんな場面を思い出して、どうしようもなく切ない気分になった。

本当にあった話がもとになっているけど、現実はさらに過酷なため少し手が加えてある。そのほうがいい。これは事実をなぞる話ではなく、今もどこかで生きているあの子たちの心を映したものだから。映画ごと抱きしめてあげたくなる。

勧善懲悪の冒険活劇を見慣れている息子たちには、はっきりした結末のない終わり方は納得できなかったらしい。映画が終わると、10歳の北斗が叫びだした。「あの f***ing mother が悪い! ひどい! 死んでしまえ!」とふだんはめったに使わない激しい言葉で怒り狂ってる。

目のまわりをうっすら赤くして感情を爆発させている彼は、結局最後まで母親をなじることもなかったあの子たちの心の叫びを代弁しているかのよう。大人の視点で観ている私たちとは違って、子供の立場で感情移入していたらしい。ベッドに入ってもぶつぶつ言っているので、久しぶりに布団に入って頭をなでてやると、やっと落ち着いて寝息を立て始めた。

映画が終わっても、ずっと押し黙って無表情だったのは12歳の大地。最近ちょっとクールに振る舞うところがあって、素直に喜んだり悲しんだり感動したりしなくなっている。自分の感情を持て余す不器用な十代に入ってきた証拠。

ところが夜中に、頭が痛い、眠れないといって起きてきた。身長が変わらないほどの大きな体を預けてくる。「気持ちを心に閉じこめたら頭が痛くなるの。映画には感情をぶつけていいから。悲しかったら泣いたらいい。むかついたら怒ればいい。恥ずかしいことじゃないから」と言ったら、こくんとうなずいてしばらくじっと抱かれていた。

世の中には理不尽なことがいっぱいある。悲しいことも苦しいこともどうしようもないことも。でも生きている限りは、肩に降り積もる悲しみを払いのけつつ、前を向いて歩いていかなきゃならない。

息子たちにどんな未来が待ち受けているのか、私には計り知れない。でも運命が彼らの前に立ちはだかった時、あの子たちを思い出して、少しだけ勇気を出してほしい。どんな形になっても人生は続いていくから。

(2005年06月29日)




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