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若い音楽
もうすぐ13歳になる長男が、いわゆるロック系の音楽を聴き始めたのは約1年前。私がラジオの深夜番組を聴き始めたのも中学時代だから、誰が教えなくても年頃になれば、新しい音楽に熱中したり恋愛したり、ちゃんと段階を経てすることはするのね、と妙に納得する。

彼のお気に入りは、Simple Plan から始まって Green Day、Sum 41、Blink-182、Billy Talent など、いわゆるギャンギャンしたオルタナ系。最初は何のバンドかどんな曲かさっぱりだった私も、車やキッチンや子供部屋で四六時中鳴っているラジオと iTunes のおかげで、門前の小僧よろしくメロディくらいは覚えた。いい曲じゃんと思い、歌詞を確かめてギョッとなるものも少なからずあるけど(笑)

で、あんまり熱心に聴いてるから、んじゃま、そろそろコンサート初体験もいいかと、夫が仕事がらみで Nickelback のチケットを入手してきた。彼らがデビューしたての頃からギターを修理しているそうで、あんな田舎っぽいぼさーっとしてた奴らが、今はいっぱしのアーティストだもんなぁ、と不思議そうに笑う。

会場のGMプレイスに着くと、なんだかちょっと物々しい雰囲気。その2日前にブライアンのコンサートに来たときには、荷物チェックなんかなかったのに、持ってたボトル入りの飲料水は即没収。売店でも、水やビールなどの飲み物はすべて缶やボトルからプラスチックのカップに移して販売している。観客が興奮して周りに投げつけないようにとの配慮らしい。なるほど、客層が違えば対応も異なるということか。

ステージ前の1階フロアには椅子がなく、柵でぐるりと囲んであるだけ。警備員がこまめに入場券をチェックして、椅子席の観客と区別している。肌の露出度の高いオネエちゃんが高いヒールで危なっかしく急な階段を下りてくると思ったら、案の定派手にすっころんで片手に持ってたビールをそこら中にぶちまけた。ホント、階段近くの席じゃなくてよかった。

7時開場で、7時半ごろから前座の演奏。これがぜーんぜんよくない。やったらめったらギターかき鳴らしてがなり散らすように歌って、おまえら見てろ、今オレら見下してる奴らみんな、ぜってぇ山のてっぺんから見下してやるぜ、みたいなトークでつなぐ。はぁ、そんな精神性じゃ、この先持たないって。あんたら終わってる。

8時半から2番目の前座が登場。んー、これはまだマシ、聴ける、いいかもとノッてたら、舞台脇に行っていた夫が戻ってきた。どうやら出演前に Nickelback のメンバーに会えるらしい。耳をつんざく喧噪の中をくぐり抜けて舞台裏に行くと、招待客にサインをしている4人がいた。にわかファンの私には見分けがつかないが、息子はちゃんとわかっていて、あれがボーカルのチャド、ギターのライアン、ベースのマイク、新しく加わったドラムスのダニエルと教えてくれる。

ダニエルに、このバンドに参加できてよかったね、というと、宝くじに当たった気分だよ、とはにかんで見せる。若いなぁ、可愛いなぁ、私、アブナイなぁ(笑) ライアンはギターのことで夫とは一番付き合いがあるらしく、なんだかとても丁寧に挨拶されてしまった。いいやつじゃん。ビデオで見るとちょっとキツイ印象のチャドは、意外に気さくな感じ。お兄ちゃんのマイクと2歳違いなのね、うちの息子たちもそうなのよ、というと、おんなじだー、ケンカするなよー、と屈託なく笑う。マイクの両腕には、最近生まれた2人の子供の名前がタトゥーで大きく彫ってあって、ほら、この子たちも2歳違い、と自慢げに話していた。
出演前の忙しいときだから短時間で切り上げて客席に戻る。あれ、なんかくさい。こぼれたビールとタバコと香水と、それにあの独特なにおい。えー、場内禁煙でしょーが、と思っても、暗い観客席のあちこちでどうやらみんなハイになってるみたい。においに敏感な息子たちが、くさい、息ができないと訴え始めた。うーん、これはブライアンのときにはなかったことだなぁ。あのときは観客の年齢層も高かったし。

さんざん待たされて本番の Nickelback が登場したのは9時半をだいぶ過ぎた頃。え、あれがさっきのお兄ちゃんたち? と思うくらい雰囲気が違う。最初からものすごいハイテンションで観客をあおって、ラジオでも聴き慣れた曲をガンガン飛ばしていく。みんなで歌おう的なノリだったブライアンのときとは違って、観客がついていけるギリギリの線で激しく歌い全速力で演奏する。ボーカルが明瞭に録音されたCDしか日頃聴いていない息子たちは、しばしボーゼン。大音量の洪水に呑まれて、ノリ切れないまま置いてきぼりをくった感じ。

よく知られた曲がひとしきり終わると、後半はギンギンの骨太ハードロックでぶちのめすような演奏が続く。ああそうか、彼らが本当にやりたいのは、実はこういう音楽なんだ、と改めて気づいた。売るために、売れるために作った音楽があって、その対極に、彼ら独自の世界がある。大衆には受け入れられなくても、ラジオでかけてもらえなくても、名が知られた今なら、コンサートで満場の聴衆に聴いてもらえる。これがオレたちの音楽だっ!ってふんばって絶叫してる感じ。若さがほとばしり、フルスロットルで駆け抜けていく。なんか今時アッツイ奴らだなぁと、こっちの胸まで熱くなった。

って子供をほっぽり出してたら、一匹沈没。なんと、次男が狭い客席に丸まって熟睡状態。こんなむっちゃくちゃうるさいところでよく眠れるわねぇ、と前の女性がケラケラ笑う。あー、この人も相当ハイになってる。長男は、と見ると、なんだかぼぉーっとしてる。受動喫煙で彼もちょっとトリップしてたかも。結局、くさい、うるさい、眠たくなる、が、コンサート初体験の息子たちの感想。んー、もうちょっと大きくなったらまた一緒に行こうかな。
ちなみに Nickelback の曲で私が一番好きなのは Animals。それを言うと、長男は、うわっ、怖ーっとのけぞった。あのダダダーッとアップテンポで追いつめていく感じが好きなんだけど。で、じっくり歌詞を読んだら、なんかスゴイのね、これ(笑) うちの息子は、全部理解してるんだろうか。そうだとしたら、うーん、子供の成長は意外に早いぞ……。

(2006年02月08日)




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